【and people 】andクリエイターを大解剖! case:市沢衣久
食ライフのプロにインタビューこのシリーズはand.で活躍する食のクリエイターたちの“いま”を探るべく、普段の飾らない素顔や仕事内容をのぞいてみました。プロだからこそ知るテクニックや裏事情は、目からウロコ!知って得する情報も盛りだくさんでご紹介していく連載です。
今回、担当してくれたのはフードコーディネーターの市沢衣久さん。
撮影はフォトグラファー近藤恵佑が担当しました。
肩書:フードコーディネーター
インテリア業界から転身し、料理の道に入られたという市沢衣久さん。常に新しいお仕事に挑戦し続ける様子が印象的です。趣味は、手作り調味料とのこと。普段からどのような料理を作られているのか、お話を伺ってきました。
食べ疲れない料理
foodconcieruge…今回、この記事内に掲載する用にご提案いただいた撮影用のレシピが、“和食調味料を使って作る世界の料理”ということですが、テーマ性がとても面白いですよね。
ベシャメルソースに白味噌を使ったり、ブイヨンの代わりに白だしを使うとか…。試してみたいと思うものがたくさんありました。普段から和の調味料に関心が高いのですか?
市沢さん…基本的に手作りできるものは、自分で1から作りたいと思ってます。これは、お仕事に関係なくで、家では調味料のほとんどを手作りで使ってます。
foodconcieruge…それはすごいですね! 私も最近醤油の自家製始めたのですが、市沢さんはどのような調味料を手作りされているのですか?
市沢さん…以前、書籍のお仕事で麹本を作らせていただいたのがきっかけで発酵調味料を作るのが趣味になりました。塩麹としょうゆ麹は欠かさず作っていますし、味噌も。あとは、お出汁類も自分でやるようにしています。
foodconcieruge…やはり調味料は日本特有のモノを手作りするのが多いのですか?
市沢さん…いえ。世界の調味料も手作りしますし、アレンジもよくします。
以前、プライベートでタイ旅行に行ったとき、たくさんタイ料理を食べてきたのですが、味が濃いなぁと思うことが多かったのです。添加物の問題もあるのかもしれないな、と思いました。そこで、これを手作りの和食調味料で作ったら、食べ疲れないと感じました。添加物をアンチするわけではないのですが、塩麹を含めて日本の調味料を使ってアレンジした方が食べていて疲れないと思ったのがきっかけで、それ以降はなるべく調味料は手作りしています。
foodconcieruge…食べ疲れる…。何となく分かります。舌に膜がはるような、胃が重いような・・・そんな感覚でしょうか?
市沢さん…そうです、その感覚! 以前は気が付かなかったのです。自分で手作りの調味料を作るようになってからすごく分かるようになってきました。それ以降、タイ料理だけではなく、世界の料理でもアレンジ可能ではないかと思うようになりました。例えば、今回、提案させていただいたベシャメルソースに白味噌を入れるとか、これは前からよく作っていたのですが、世界の料理を日本の調味料でアレンジすることに興味を持ちました。
foodconcieruge…お出汁類も作られているとのことですが。
市沢さん…普通のかつお昆布だしは、必ず自分で作りますね。お味噌汁の出汁は、絶対に自分で作る方がおいしい!
foodconcieruge…かつお節もご自分で削ったりするのですか?
市沢さん…そうです。手間はかかりますが、亡くなった祖母がきちんとかつお節から削っていたのを覚えていて。その方が断然おいしいです。
foodconcieruge…素敵なおばあ様ですね。幼少期の食体験は大きいですよね。いつか市沢さんのお味噌汁を飲んでみたいです。他には、どのような調味料を作りますか?
市沢さん…白だしも作ります。あとは、ラー油とかソースも作りましたね。
foodconcieruge…ソース! 私もまだチャレンジしていないのですが、すごく手間がかかりますよね?
市沢さん…そうなんですよ。時間がかかる(笑)。野菜を煮詰めてドロドロにしなくてはいけないので。短縮してウスターソース状態にしてみました。それでも、1日置いてその後、搾ったりして2日かかりました。
foodconcieruge…2日ですか!?そんなにかかるのですね。それは大変!!でも自家製ソースは、本当に美味しそうです!
市沢さん…自家製ソースで、焼きそばを作ったのですがやはり食べていて疲れないですね。野菜のうま味が凝縮していて優しい味に仕上がります。
foodconcieruge…自家製ソースで焼きそばだなんて、絶対に間違いないですね。美味しそう!本来のソースの味を知るきっかけにもなりそうです。
市沢さん…本物の味は、満足感があるので変に食べ過ぎない。結局、シンプルなところに料理は落ち着くのだと思っています。
大きな箱からテーブルの上へ
foodconcieruge…プロフィールを読ませていただきました。最初はインテリア業界にいらしたのですよね。料理の世界に転身されたのは、なぜですか?
市沢さん…5年くらい飲食店舗の内装を手掛けていた会社に勤めていました。カフェやケーキ屋の内装を担当していました。ある時、千葉のカフェで、イートインスペースがあって、ちょっとしたテーブルコーディネーターの依頼があり、私が担当させていただいたのですが、こっちの狭い世界の方が好きなのかも?と、気が付いたのです。
foodconcieruge…内装という大きな箱よりも、テーブルの狭い世界の方が好きだと思ったということですね。
市沢さん…そうです。ちょうどその頃、フードコーディネーターという職種が有名になってきたころで、TVでも特集されいろいろな人が活動を始めた頃でした。フードコーディネーターは、ここ10年くらいから一気に認知されてきた感じでしょうか。こういうお仕事があることを知り、私もなりたいと思い、フードコーディネーターの学校に通いはじめました。
foodconcieruge…そこでフードコーディネーターの資格をとって、すぐにフリーランスになられたのですか?
市沢さん…飲食店での経験がなかったので懐石料理屋の厨房や、パン屋さんのサンドイッチ製造などを3~4年。あとは、料理家さんのご自宅兼スタジオで料理教室のお手伝いなどをしていました
レシピを立て直す仕事
foodconcieruge…いまは、主にどのようなお仕事をされているのでしょうか?
市沢さん…いまは広告のお仕事を中心に、雑誌や書籍のスタイリングと調理ですね。料理家の先生がレシピを書くのが得意ではない場合は、レシピ作成のお手伝いから盛りつけまでを担当することもあります。レシピを立て直すのです。
foodconcieruge…レシピを立て直す? 具体的に教えていただけますか?
市沢さん…一例ではありますが、料理家さんが出してきたレシピの記載がバラバラになっていることがあります。例えば、にんにくの分量にしても、1片・グラム・大さじ表記などバラバラな時があります。そういう全体の統一をします。あとは、野菜の切り方ですね。
foodconcieruge…野菜の切り方から、調整しなおすのですか?
市沢さん…そうです。1冊の書籍やとあるレシピサイトの全体を俯瞰でみたときに、同じ野菜の切り方が偏って見えると感じたときに、この料理では、みじん切りにしましょう。これは、短冊切りに…など、見栄えを考えて再調整するのです。
foodconcieruge…見た目も考慮して切り方も変えていくわけですね。それは、編集者やメーカーさんにとっては、市沢さんのアドバイスははありがたいですね。レシピの表記の統一やサイトや紙面のまとまりがでたりと、ビジュアル面からも変化が出るわけですから!
器に盛りたい料理がある
foodconcieruge…いろいろなお仕事手掛けられている中で、何が一番好きですか?
市沢さん…レシピ開発が好きですね。広告のお仕事が多いので、宣伝したい商材があって、それを使ったアレンジメニューを考えて欲しいという依頼が多いのですが、そういう主となるものがあってレシピ展開していくのが得意です。作りたい料理のアイデアがどんどん浮かびます(笑)。
あとは、自分で作った料理を、盛りたい器に盛ること。フードスタイリストなので、お料理を作りながら、スタイリングも同時に考えています。料理もスタイリングも両方を手掛けたいです。
foodconcieruge…きっと、市沢さんの中では料理もスタイリングも一対なのですよね。
市沢さん…それはあると思います。器のリースに出掛けて、素敵な作家さんの器を見つけたらレシピの方を替えることも多いです。器から料理を考え直すのも好きです。
foodconcieruge…とくにブルーの色の素敵な器があったらなおのことではないですか?!笑 市沢さんて青の使い方が独特ですよね。
市沢さん…ばれました!?ブルー大好きなんです!
テレビの世界へ導かれて
foodconcieruge…今後は、どのようなお仕事を手掛けていきたいですか?
市沢さん…自分のインスピレーションを刺激する仕事にもっと出会っていきたいと思っています。
仕事もいろいろとチャレンジをしているところで、じつは今度、テレビドラマのフードのお仕事をいただきました。
いまからドキドキしています。とても楽しみです。
foodconcieruge…それは楽しそうですね。タレントさんが作るのをサポートするような感じでしょうか?どのような料理が出てくるのですか?
市沢さん…今回はドラマの特性上、結構しばりが多い中でのお仕事になってます。生野菜はほとんど使えないのですが、お肉と魚などは豊富にあるので、その辺りで調整をしていくという。
いまは、毎日が打合せです。
foodconcieruge…遣り甲斐がありそうですね~。どんなドラマなのなのかも気になりますが。
今後は、ドラマのフードも多く手掛けていきたいというお気持ちがあるのですか?
市沢さん…ムービーもスチールもいろいろな現場を体験していきたいと思っています。
今回、ドラマ制作は初めてですが、TVCMや広告のお仕事、雑誌媒体やWEBなんかも今以上にどんどん増やせて行けたらと思っています。
foodconcieruge…マルチな活躍を希望されているのですね!
市沢さんのクレジットがテレビで見られる日を楽しみにしていますね。本日は、ありがとうございました!
ご協力いただいたクリエイター

佑成陽子クッキングアートセミナーを卒業。
フードコーディネーター資格取得。
現在、雑誌、広告、TVCMなどの調理。レシピ開発、料理制作、スタイリングを担当。
資格:フードコーディネーター・ベジタブル&フルーツアドバイザー・食育インストラクター・和食インストラクター

出版社勤務後、フリーランスへ。食の取材を中心とした本の企画・構成をはじめ、レシピ作成やスタイリングを含めたトータルコーディネートなどを手掛けている。“食べるものによって、人の体も心も育まれる”という考えをモットーに、食べ物の裏側にある環境や農業、栄養学にも関心が高い。
著書に、日本の食文化をまとめた『おにぎり』、『まるベジ・ドリンク』共にグラフィック社刊などがある。
現在、フードスタイリスト、料理カメラマンとの女性3人のフードユニット「Soup Caravan」を結成中。
今回作ったレシピのお問い合わせや
市沢さんへのお仕事の依頼はこちらまで(→hue_and@hue-hue.com)
依頼可能内容:レシピ開発、撮影時のスタイリング、パッケージ広告フードスタイリング など