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【and people 】andクリエイターを大解剖! case:菅野尚子

【and.people】このシリーズはand.で活躍する食のクリエイターたちの“いま”を探るべく、普段の飾らない素顔や仕事内容をのぞいてみました。プロだからこそ知るテクニックや裏事情は、目からウロコ!知って得する情報も盛りだくさんでご紹介していく連載です。
今回、担当してくれたのは、たくさんの肩書をお持ちの菅野尚子さん。
撮影はフォトグラファー ジョ ヘミが担当しました。

肩書:かんたん郷土料理研究家・フードコーディネーター・惣菜管理士・はちみつ料理研究家

日本の食文化をはじめ、茶道や華道にも精通し、はたまたフランスの郷土料理を学ぶために渡仏までしてしまったという菅野尚子さん。数々の肩書を生かしながら、そのすべてを楽しみながら活動されている姿が印象的です。今後は、和食の新しい提案をフランスで展開するとのことで、お話を伺ってきました。

「商品企画開発力」と「魅せる技術」

foodconcieruge…菅野さんはメニュー広告制作会社、雑誌編集プロダクションなど食のお仕事を幅広く手掛けられたと聞きましたが、メインは商品企画や開発のお仕事が多かったのでしょうか?

菅野さん…はい、食品商社で商品企画開発や提案営業の仕事をしていました。例えば、某コンビニエンスストア数社を担当していたのですが、レジ横に置かれるファーストフードの商品(デザートやホットフード系)や店内の惣菜などを、メーカーさんと組んで、バイヤーさんの意向を聞きながら商品を作り上
げるお仕事です。商品を作る前は、流行りの動向をキャッチして、マーケットリサーチすることも重要で、テパ地下やベンチマークとなる店にいったり、新カテゴリー開発では海外のファーストフードリサーチでヨーロッパへ行ったり、国内や海外の食品工場を視察したりと貴重な経験をさせていただきました。社内では毎月コンビニエンスストア6社の同じ商品を比較するマーケティングの会を実施し、結果をクライアントにレポート送付して商品を売るだけでなく、付加価値的な役割をしていました。どんな味のどんな商品がお客様に求められているかを知れることは、味や知識の蓄積になりました。

foodconcieruge…面白いお仕事ですね。遣り甲斐がありそうです。

菅野さん…はい。店内のオペレーションを考慮した食品の加工方法や、時代に合うメニューを考えながら店頭で販売されるイメージを分かりやすく提案していくのです。コンビニエンスストアのバイヤーさんが敏腕で商品開発力もあったので、どんどんメーカーや商社を巻き込んで「今度は、こんなものをやろう!」と、次々に新商品が生まれていくような感じでした。本当に、充実した毎日でした。

foodconcieruge…なぜ、辞めてしまったのですか?

菅野さん…長年の夢だったフランスの料理学校へ入ることと、実際に住んでみたいという想いが捨てられずにいました。選択するときの一つの信条として「後悔はしたくない」というのが常にあり、これは、行かないと死ぬときに後悔すると思ったので(笑)、フランスへ行くことを決断しました。

foodconcieruge…そのバイタリティーに背中を押される気分になります。菅野さんをそこまで突き動かしたものって何だったのでしょうか?

菅野さん…形式ばったフランス料理ではなく、一般のフランス人がどのような家庭料理を食べているのかずっと気になっていました。あとは、私の今のライフワークでもある郷土料理、フランスの郷土料理にも興味がありました。焼き菓子にしてもカヌレ、クイニー・アマンなど地域ごとにいろいろとあり、本場の伝統菓子も知りたかった。そして料理学校を選ぶ時に、「ル・コルドンブルー・パリ校」に入ったのです。学校がある時はパリで、お休みの時は南フランス(モンペリエ)や中央の山間の町(ヴィッシー)の語学学校などで、まさにフランスの家庭料理と郷土料理を味わいながら、ホームスティをして過ごしていました。

foodconcieruge…フランスでたくさんの学びがあった中で、今後はどのように活動していきたいと思われたのでしょうか?

菅野さん…一回日本に戻って、自分はこれができますと伝えられる軸となるものを作りたいと思いました。フランス料理ができる人は五万といるし、やはり「魅せる料理」に興味があった。フランス料理が好きになったきっかけもお皿の上がアートのようだなと感じたところが始まりだったので。

↑米粉と豆乳のクレープベリーソースがけ
コンセプト:日本食材の販促のためのフランス人が家庭で作るメニュー
ターゲット:フランス人

 

foodconcieruge…分かります。フランス料理のソースとか、本当にお皿がパレットのように美しいですよね。

菅野さん…帰国後すぐ「魅せる技術を磨きたい」と、フード専門スタジオの門をたたきました。仕事はハードでしたがスチールやムービーなど大手企業さんを担当している会社なので、技術は長年培った素晴らしいものがありました。フードコーディネートの道具もオリジナルで作っていましたし、限られたものしかない現場での臨機応変な動き方や、泡の消し方、底上げの仕方などの技術、フードコーディネーターとしての基本は、そのフード専門スタジオで学ばせていただきました。

得意分野は30代主婦向け。掲載レシピは1000件以上!

foodconcieruge…その後は、編集プロダクションに入られたのですよね。

菅野さん…はい、幼稚園児から主婦層までの様々な年齢層に合わせた媒体の料理提案やフードコーディネートをしていました。

foodconcieruge…それぞれのターゲットに料理を合わせるのは、大変ではなかったですか?

菅野さん…実は、そういうのが好きなのです。ターゲット層とコンセプトに沿ったお料理を考えたりするのが得意です。

foodconcieruge…だから、今回のレシピ提案もターゲットがきっちりと書かれていたわけですね! 長く食の企業に勤められている方は、そういうところがとても丁寧で、やはり説得力が違うなぁって思って読ませていただいていました。
料理を作るうえで、まずターゲットをどこに持って行くかがたぶん先にあるのですよね?

菅野さん…そうですね。私は、クライアントとその先にあるお客様に喜んでもらえるものを作りたいので、お仕事をいただく際にターゲット層やコンセプトはきちんとクライアントに確認します。それをメモに書き、購入者のペルソナを設定します。自分でも書いておかないと、レシピを作り始めて右脳だけに頼るとずれてしまうことがあるので、左脳を働かせています。

foodconcieruge…その後にフリーランスになられたのですか?

菅野さん…子どもが生まれるタイミングで、出産後にフリーランスとして、某食材宅配会社の週間カタログの30代主婦層向けの冠レシピコーナーのお仕事を担当し、8年間レシピ記載をさせていただきました。子どもも食べられる主菜が求められるレシピコーナーでしたので、子どもとの生活で見えること、考えることも仕事に活かせるのが楽しいですね。レシピが入稿されるまでにたくさんの方のチェックを受けるのでレシピの書き方やノウハウも自然と身に付き、各媒体合わせると掲載レシピは1000件以上も。特に30代主婦層レシピはおかげ様で得意分野となりました。(笑)

↑牛乳で作るフランス家庭料理「チキンフリカッセ」
コンセプト:身近な材料で出来るフランス家庭料理メニュー
ターゲット:30代主婦

 

いま、生み出せない料理

foodconcieruge…フリーランスになられてから、郷土料理などがライフスタイルと伺いました。なぜ、郷土料理を伝えたいと思われたのですか?

菅野さん…私は、「いま、生み出せないもの」に興味があるのです。例えば祖母が作り上げてきたものは、長い歴史があったからこそ、出来た味がある。先祖から代々受け継がれてきた重みのある料理ですよね。それは、茶道だったり、華道だったり…。それも二十歳くらいから習っているのですが、何か歴史のあるものにすごく惹かれるのです。

foodconcieruge…そうした歴史のあるものを継承していきたいという想いが、昔からあるのですね。

郷土料理 愛媛のお雑煮~先祖代々伝えられている手作りの白味噌~
コンセプト:郷土料理
ターゲット:次世代の子どもやその親

菅野さん…いま年齢を重ねたうえで周りを見渡すと、改めて伝統のある郷土料理の大切さを感じるのです。いまやネットのレシピが自分の家庭の味になっている現状がありますよね。それはそれで簡単便利で忙しいお母さんたちのサポートになるので良いのですが、それとは別に子供の舌の味蕾はとても敏感なので小さいうちに少しでも本物の味を体験させてあげたいと思う。それが今年で10年目となる親子クッキング教室を続けている理由です。

foodconcieruge…お教室は、どのような内容なのですか?

菅野さん…出汁をひいていろいろな料理に応用したり、材料から季節を感じてもらったり、デコレーションできるお寿司を作ったり、ちょっと楽しい内容にしています。子どもも大人も自主的に作る、楽しみながら食文化を伝える内容です。料理を心から楽しんだら、自然と長続きすると思うので。

foodconcieruge…出汁のとり方から学べるのはいいですね。最近では、パックになって売っているのが主流で、無添加の出汁の味を知らない方が増えてきたという話も聞いたことがあります。家族で学べるって素晴らしいですよね。

日本の食をフランスに!

foodconcieruge…今後は、どのようなお仕事をしたいと考えていらっしゃいますか?

菅野さん…いつも年間の目標を決めるのですが、今年はフランスの仕事をするという目標を立てていました。それが今年叶って、フランスのスーパーマーケット向けの日本食材を使ったレシピ開発のお仕事ができたので、今後も日本食材や、生蜂蜜を使った和食をフランスに伝える仕事がしたいと思います。

 foodconcieruge…フランスのシェフは積極的に日本食を取り入れていますものね。生蜂蜜を使った和食も気になります。

菅野さん…生蜂蜜は栄養価が高くて、まさにスーパーフード。190種類の酵素・ビタミン・ミネラルなどの栄養素が入っているのです。生蜂蜜を料理に使おうと思った理由のひとつは、某食材宅配会社さんのレシピ提案をしている時です。レシピが難しそうだと思ったら、みなさん作りたくないですよね。だからレシピは1行でも減らしたいわけです。調味料もいろいろとあった方が複雑な味は出るのですが、みりんと酒と、って調味料を加えるとそれだけで行数が増えます。蜂蜜は、コクとうま味や甘みもあるので、みりんも酒も砂糖も必要なくなるのです。生蜂蜜を使うと、少ない調味料で味が決まりやすいと気づきました。

foodconcieruge…確かに、甘みもつくしコクが生まれますよね。

菅野さん…いま、砂糖をなるべく減らしたいという方も増えているので、風潮的にも生蜂蜜は、これから注目されると思うのです。お肉の下味に入れるとお肉が柔らかくなり抗菌作用もある、ご飯を炊く時に入れると保水性も高く、かたくなりにくいなど、お弁当にもおすすめです。

foodconcieruge…いいことがいっぱいですね! すぐに生蜂蜜を買いに走りたくなりました(笑)。

これから、生蜂蜜を使った和食を広めるためにフランスに渡りたいという野望をお持ちとか?

菅野さん…そうですね、和食を作っていて気になるところは、砂糖が多すぎるということです。ヨーロッパの方々も砂糖を摂ることを気にする方も多く、キッチンに砂糖はないけど、蜂蜜があるというお宅は多いのですよ。私が提案したいのは「生蜂蜜×和食」というのをヨーロッパに向けて発信していきたいなと思っています。

↑簡単はちみつ和定食(鶏照り焼き、ご飯、味噌汁、胡麻和え)~全てに生蜂蜜を使用~
コンセプト:生蜂蜜を使った和定食
ターゲット:健康に意識の高い方(フランス人・日本人向け)

foodconcieruge…それは素晴らしいですね。聞いていてワクワクします!

菅野さん…ヨーロッパに進出したいという日本企業さんはたくさんいると思うのです。ヨーロッパの受け入れ体制も和食が無形文化遺産になったことで、とても注目されています。私ができることは、フランス人の嗜好や食べ方を知っているというのが強み。フランス人がきちんととり入れやすい、新しい日本食のレシピ提案をしていきたいと考えています。

foodconcieruge…日本の枠を飛び越えて、新しい和食文化を発信していかれるなんて。今後の菅野さんのご活躍を期待しています!

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菅野さんのお仕事にご興味がある方、日本の食材や食文化をフランスへ広げたいとお考えの企業方々は、ぜひhueまでお問い合わせくださいませ。

ご協力いただいた食のクリエイター

菅野尚子/フードコーディネーター<菅野尚子/FCAJ認定フードコーディネーター・惣菜管理士>

料理好きの母を見て育つ。食品商社にて 商品企画開発の勤務後、渡仏。フランス人家 庭に滞在しながら、ル・コルドンブルー パリ校にて料理や菓子を学ぶ。フード専門スタジオ、編集プロダクションにてフードコーディネーターとして勤務。  企業向けの商品企画・開発や パッケージ広告のフードスタイリングやレシピ提案 を得意とする。食材宅配会社の冠レシピコーナーで、簡単美味しい主婦向けレシピを毎週8年間掲載。他媒体累計 1000 点以上掲載。 寺子屋親子教室やはちみつワークショップも実施。

資格:フードコーディネーター・惣菜管理士・ ル・コルドンブルー パリ校 料理専攻・フランス語資格試験 DELF B1・華道草月流師範 ・茶道表千家小習・ホームメイド協会 パン科師範

川越晃子/たべものライター&編集<川越晃子/たべものライター&編集>

出版社勤務後、フリーランスへ。食の取材を中心とした本の企画・構成をはじめ、レシピ作成やスタイリングを含めたトータルコーディネートなどを手掛けている。“食べるものによって、人の体も心も育まれる”という考えをモットーに、食べ物の裏側にある環境や農業、栄養学にも関心が高い。
著書に、日本の食文化をまとめた『おにぎり』、『まるベジ・ドリンク』共にグラフィック社刊などがある。
現在、フードスタイリスト、料理カメラマンとの女性3人のフードユニット「Soup Caravan」を結成中。

今回作ったレシピはこちら(@hueand_and)

菅野さんへのお仕事の依頼はこちらまで(→hue_and@hue-hue.com)
依頼可能内容:広告向けフードスタイリング TV CF パッケージ
企業コンサルタント、商品企画・開発、
レシピ作成、料理/お菓子/生はちみつ  など

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hue_and@hue-hue.com

【担当】 森河 ・ 高橋

会社概要

株式会社アマナ

創設1979年4月28日
所在地本社:東京都品川区東品川2-2-43
主な事業内容ビジュアルコミュニケーション事業
資本金1,097百万円
従業員数(連結)1,107名※2020年1月1日現在
URLhttps://amana.jp