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【and people 】andクリエイターを大解剖! case:西脇光重

hue andで活躍する食のクリエイターにインタビュー!
フード業界にてさまざまな活動をするクリエイターは、どのようにその職業に就いたのでしょうか。これまでの経歴や仕事に対する思い、これからやっていきたいことなど、クリエイターの内なる部分にスポットを当てる「and people」。

今回は、海外での展示会や広告をはじめ、書籍の表紙や食品のパッケージなどでも作品をお見かけする版画家の西脇光重さんにお話を伺いました。

版画家/西脇光重さん

会社員として働いていた経歴を持つ西脇さんは、退職を機に好きなことを仕事にしようと、版画家として独立。それからの10年でさまざまな作品を世に送り出しました。食とのつながりでは、昨年カルディが発表したトートバッグの版画や、ベーカリー“リチュエル”のパッケージデザインなどを手掛けていらっしゃるので、目にしている方も多いでしょう。今回は、「好き」を仕事にする難しさや楽しさについて伺いました。

「好き」だけじゃない商業的目線を持った仕事選び

素材メーカーで営業職についていたという西脇さん。欧州を中心とした新規ユーザーの開拓が仕事だったとあって、数々の海外出張を経験したと言います。

Foodconcierge・・・メーカーでの仕事で学んだことはどんなことでしたか?

西脇さん・・・新規開拓の営業職だったので、とにかく仕事は自分で作らなくはならない、ということを学びました。海外にもたくさん行かせていただいたので、貴重な経験でもありましたね。

Foodconcierge・・・それがなぜ、版画家に?

西脇さん・・・会社を退職したときに何をしたいか考えたのですが、一度きりの人生のなかでもっと好きなことをしてみたい、という気持ちが湧いてきたんですね。図画工作や絵を描くのが好きで、そんな仕事ができたらいいなと思ったところから、独学で版画を学び、版画家としてデビューしました。

Foodconcierge・・・これまでのキャリアが活かされているところはありますか?

西脇さん・・・ありますよ。版画は絵画と違って、同じ絵柄を複数印刷できるので、商業美術的な要素があるんです。これまでのサラリーマンのキャリアに通じるものがあると思います。もともとサラリーマンなので、アーティストとしていうよりは、仕事と結びつけるビジネスマンである自覚が強くて。仕事になっていかないと、続けていけないですよね。

Foodconcierge・・・好きなことを仕事にして生きていきたいという方はたくさんおられると思うのですが、次の仕事につなげるためにしていらっしゃることやアドバイスはありますか?

西脇さん・・・いちばんは作品で返すことで、自分にしかできない版画表現でクライアントの要望に応えられるように心がけています。自分の思いが中心ではなく、要望があってそこにいかに自分の表現を持って近づくことができるか、ということが、仕事に結びつくのかなと。

Foodconcierge・・・売り込みなどもしていらっしゃいますか?

西脇さん・・・していますよ。仕事をしたい分野の会社をネット検索で探して、ご連絡させていただいています。独立当初は電話で営業して作品を持ち込んだりしていましたが、相手の時間もとらせてしまうので、今はメールでご連絡して、興味を持っていただいた方に作品をお持ちしています。この間は、ネットをご覧いただいたという、宮城県のキャベツ農家さんのダンボール装飾用木版画を制作しました。

版画の楽しさとは

作品の大きさによって製作期間は違いますが、畳一畳分の版画だと彫るだけでもおよそ一ヶ月かかるといいます。西脇さんの作品には木版画だけでなく、銅板を削ってつくる銅版画もあります。

Foodconcierge・・・銅板の方が木版画より大変なのでしょうか?

西脇さん・・・そんなこともないですよ。ただ、腐食しないようにしたり、磨く作業をしたりと、掘ったあとに作業工程が少し増えるので、日数的には銅板の方がかかります。

Foodconcierge・・・銅板と木版では、彫り方意外にも違いがありますか?

西脇さん・・・銅板の方が、緻密で細かなデザインに仕上げています。木版画は素朴に大まかなデザインをして彫っていくイメージです。

Foodconcierge・・・版画を制作するときのいちばんの楽しさってなんでしょうか?

西脇さん・・・版画はよくも悪くも、そこにインクをのせて刷ってみないと、どんな模様に仕上がっているかわからないんです。もちろん予想はできますが、印刷してみたら予想以上の作品に仕上がることもあるんです。そういうときは本当に嬉しいですし、構図を考えるときも彫るときも無心で作業しているのが好きです。

美的センスの磨き方

10年もの間、さまざまなアイデアを生み出している西脇さん。どこからそのインスピレーションを受け、新しい作品を生み出す原動力になっているのでしょうか。

Foodconcierge・・・生活のなかで、仕事の刺激になるようなことをしたりしていますか?

西脇さん・・・普段の生活では、町歩きをすごくたくさんしますね。町並みや建物の形、お店のデザインやショーウインドウなどを見るのも好きですし、お店それぞれにどんな物語があるのか想像するのも好きで、そういうことを考えているときに新しいアイデアを見つけたりします。

Foodconcierge・・・そうやって見ながらアイデアを考えるのは楽しそうですね。

西脇さん・・・神保町の古本屋さんにもよく出かけます。70〜80年代のファッションやデザイン、工業系の雑誌などジャンルを問わずに見ることで、心に刺さるものを探したり


Foodconcierge・・・海外出張中の経験も活きていらっしゃいますか?

西脇さん・・・そうですね。インスピレーションの源は、サラリーマンのころに仕事で訪問した欧州の都市での経験が中心になっています。現在も、ロンドンやパリ、ニューヨークに年1〜2回ほど行って、見本市出展や個展をひらいたりもしています。そういうときは空き時間ができるとすぐ散歩に行くので、1回の出張で1000枚ほどは写真を撮ってきますよ。

Foodconcierge・・・他の方の作品も見たりしますか? 注目しているクリエイターさんなどはおられますでしょうか?

西脇さん・・・しっかり美術館に行ったのは5〜6年前が最後で、そのときはベン・シャーン展に行きました。散歩途中でふらりとギャラリーに入ることはありまして、偶然立ち寄ったイタリアのギャラリーで、オリーブオイルを古い鍋に垂らしてつくった模様を写真に撮った作品がありまして。それがとても素敵でしたよ。好きな作家はフランスのフォロン氏で、詩的な世界観の版画と絵画に惹かれるものがあります。アメリカでは、デーヴィッドストーンマーチン氏のジャズレコードジャケットにあったイラストの、滲んだ線や構図に影響を受けました。

どんな風景にも版画が活きる

コロナ禍でも前向きに活動し、デトロイトの大型銅版画の制作が終わったそう。今後はボストンとパリのギャラリーで展示する予定だそうです。なかなか海外と日本を行き来するのが難しい状況ですが、バイタリティーのある西脇さんは今、学ぶことにも力を入れているといいます。

Foodconcierge・・・これまでのお仕事で印象的なものはありますか?

西脇さん・・・10年前、独立したてのころにいただいた「メイスン&ディクスン上下巻」(新潮社刊)の装丁に使う銅版画は思い出に残っています。あとは、5年前にロンドン邸宅に向けて作った、インテリア用の巨大銅版画は、横2メートル、縦1メートルと非常に大きな作品を作らせていただきました。また、日本でよく見かけていただくのは、昨年作りましたカルディーコーヒーのトートバッグで、こちらでは木版画を制作しています。

Foodconcierge・・・日本と海外のお仕事に違いってありますか?

西脇さん・・・そうですね。日本では、クライアントの要望に応じてオーダーの作品を作らせていただくことが多いのですが、海外では既存のオリジナル作品を持って仕事することが多いです。現在はボストン、ニューヨーク、ロンドンなどのアートギャラリーに作品を置いていただいていまして、オリジナル作品を中心にご購入いただいています。


Foodconcierge・・・今後はどのようなことをしていきたいですか?

西脇さん・・・いただいた仕事を一つひとつ丁寧に制作していくことがいちばんなのですが、今年は有田焼やボーンチャイナ、美濃焼の窯業とコラボレーションする仕事をはじめました。現在はコロナ禍で進んでいないのですが、今年3月に佐賀県有田に訪問し、キハラ社にて有田の歴史や制作工程を学びました。また、カナダトロントの家具会社と組みまして、カフェテーブルの試作もはじまっています。版画作品をテーブルの表面に貼り、ニス加工するという作品なのですが、あらゆる分野での仕事に“版画ブランド”が育っていけばいいなという夢を持っています。それから版画ではないのですが、紙粘土で銅版画の世界観を表現したいなと思って、こちらもこれから挑戦していきたいことのひとつです。

西脇さんが彫り進めた一本一本の線が、絵となり景色となるようすが伝わってくるインタビュー。素晴らしい作品の数々が、お散歩の風景から切り取られて作られていると知ると、より愛おしく感じてきますよね。日本文化とのコラボレーションや新たな試みなど、今後の活躍にも注目です。

ご協力いただいたクリエイター

西脇光重さん/版画家

版画家。書籍「アヴィニョン五重奏」ロレンス・ダレル著(河出書房新社)、雑誌「NUMERO TOKYO」(扶桑社)をはじめ、ニコアンド、ビアズリー、 Made in Sens Paris などファッション、そして広告、インテリアなど手がけるアートワークは多岐に渡る。作品はイギリス、フランス、アメリカのギャラリーにて扱われる。最近では、ロンドンのチョコレートミュージアムの広告や、パリの名店ブーランジェリーの日本初店舗リチュエル(自由ヶ丘店・表参道店)のパッケージ・内装のイラストを制作。ヒルトン東京のブッフェイベント”ストロベリーフェアー”のアートワーク、ロンドンの住宅用壁装飾用版画を制作なども手掛けている。
http://mnetching.art.coocan.jp/

 

吉川愛歩/料理ライター

出版社で勤務したのち、フリーライターに。子育てや暮らしにまつわる記事を執筆するなかで、得意な料理にジャンルを絞って活動するように。ライターとして食にまつわる記事やコピーを執筆する傍ら、料理家としてレシピ開発やフード撮影の調理、ケータリング業や出張料理も行っている。
 

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【担当】 森河 ・ 高橋

会社概要

株式会社アマナ

創設1979年4月28日
所在地本社:東京都品川区東品川2-2-43
主な事業内容ビジュアルコミュニケーション事業
資本金1,097百万円
従業員数(連結)1,107名※2020年1月1日現在
URLhttps://amana.jp